ルルドの泉に関して、もう一つの興味深い話は、なんといってもベルナデット・スビルーの生涯でしょう。
ルルドの泉の話が(仕方のないことですが)それこそ奇跡として一人歩きして全世界に広まった後も、泉を見つけた張本人であるベルナデットはそのことを吹聴するようなことは一切なく、修道院に入り、尼僧として静かな一生を送っていました。
しかし、彼女には肺結核の持病があったにもかかわらず、自らはルルドの泉に向かうようなことはなく、むしろ隣村の温泉場まで喘息治療の湯治に出かけていたというのは、なんとも皮肉なことでした。何故なら彼女は1879年4月16日、肺結核により35歳の若さで他界したからです。
もしかしたら、彼女自身は崇高で純粋な体験だったものが、一人歩きして、時には盲信されたことにうんざりしてしまったのかもしれません。
しかし彼女の話はここで終わらないのです。
彼女が埋葬されて30年の歳月が経った1909年、司教立ち会いのもとでベルナデットが埋葬された墓が掘り返されました。そこで彼女の亡骸を見たものは一様に驚きを隠せませんでした。なぜなら、彼女の体がまったく腐敗していなかったからです。普通、人間は亡くなって二時間もすると硬直が始まるのですから、30年経っても棺の中で腐敗していなかったのは驚異的です。
1925年に再び掘り返された時の彼女の体は皮膚の黒ずみと黴・異物の沈着、ミイラ化したために鼻梁と眼窩が落ち窪むなど容姿が若干変異していたため、1933年の聖列によって公開を兼ねた安置の際に、ロウで作られたマスクと手が彼女に被せられ、現在に至るまで彼女の姿を見ることができます。
本人は先の理由からルルドの泉に関して語ることが少なくなっていたのですが、彼女が亡くなった後でそのようなことが起きたことは、やはりルルドの泉と無関係とはいえないでしょう。実に驚くべきことでした。





